2018 年 4 巻 1 号 p. A_274-A_279
道路のストック効果には,生産性の向上以外に厚生効果がうたわれており,ミクロな道路整備においても周辺住民の厚生に与える影響が考えられる.そこで本研究では,地域の交通環境を指標化し交通環境の定量的評価を行い,その指標と居住者の外出や運動,健康との間の関係性を,地域の違いと個人間の違いを考慮できるマルチレベルのロジスティック回帰分析を用いて分析する.それによって,地域の生活道路の整備による地域住民の生活や健康状態への影響をはかり,道路のストック効果の一つとなりうるのかについて検討した.その結果,本研究で設定した歩行しやすさや運転しやすさにかかわる指標が,運動や外出に有意な関係を持っていることが明らかになり,居住地域の道路や歩道環境が住民の行動に影響を与えている可能性を示した.