脳卒中
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症例報告
3週間にわたって右上下肢にlimb shakingを呈し,後に左内頸動脈閉塞による脳梗塞を来した1例
出口 一郎中里 良彦二宮 充喜子山元 敏正田村 直俊荒木 信夫
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2011 年 33 巻 2 号 p. 246-250

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抄録

症例は72歳,男性.3週間にわたって持続する右上下肢の不随意運動を主訴に入院した.右上下肢に舞踏運動様の不随意運動を認めたが,その他に神経学的異常所見はなかった.SPECT所見で左前頭葉から頭頂葉に血流低下が認められたが,頭部画像(頭部CT,MRI)や脳波に異常所見はなかった.入院後,不随意運動は自然に消失したため退院したが,2日後に失語症,右上下肢麻痺を発症し再入院した.頭部MRI画像で左基底核,前頭葉,側頭葉に散在する急性期脳梗塞巣を認め,MRAでは左内頸動脈の閉塞所見がみられた.初回の入院時の画像検査・脳波で明らかな異常は認めなかったが,一連の経過から当初認めた右上下肢の不随意運動は,左内頸動脈病変による血行力学的要因が関与したlimb shaking(LS)と考えた.一般的にLSは機序が血行力学的であることから,症状の出現は一過性であることが多く,本症例のようにLSが数週間持続することは稀であるが,初診時より脳血管障害を疑い精査することで,脳梗塞を予防し得る教訓的な症例と考え報告した.

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© 2011 日本脳卒中学会
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