抄録
破裂脳動脈瘤によるクモ膜下出血 (以下SAH) 63例の発症後72時間以内の急性期脳循環を133Xe bolus injectionにより測定した.半球平均灰白質血流量 (MFG) はSAH急性期に一般に低下した。63例をMFG値により正常・増大群 (A群17例;MFG>70 (ml/100g/min)].軽度低下群[B群30例;70≧MFG>50].高度低下群 [C群16例;50≧MFG] の3群に分類し各群のsymptomaticvasospasm (SVS) の発生頻度及び重症度を比較した.A群では17.7%, B群では66。7%のSVS発生率であったが重篤な神経症状を残すか死亡するsevereSVS例は無かった.一方C群では全例にSVSが発生し, 81.2%がsevereSVSに陥った。入院時のHunt &Kosnik's Grading (H&K-G) やCT上のSAH重症度が同じ症例群においても, 急性期脳循環障害が著しい例では, severeSVSが生じ, 転帰を悪くする傾向が見られた。SAH急性期の脳循環障害はSVSの増悪因子の一つになるものと思われた.