脳卒中
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日本脳卒中学会・脳卒中重症度スケール (急性期) の発表にあたって
後藤 文男
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1997 年 19 巻 1 号 p. 1-5

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抄録
脳卒中患者の経過観察や治療効果判定の上で脳卒中の重症度を客観的定量的に評価できるスケールが必要なことは言うまでもない.その目的でNIHスケールを始め多数の脳卒中スケールが国内外から発表されているが, 真の意味で定量的なスケールは皆無に等しい.その原因は脳卒中の重症度を判定するのに必要な評価項目の重みづけが困難な為である.脳卒中の症状の一つ一つについて重症度による段階分けをすることは可能であるが, それらを総合して脳卒中の重症度を判定する為には各症状の相対的重要度を知る必要がある.しかし, それを評価する良い方法が無い.そのため, 既存のスケールでは, 重みづけを全く行っていないか, あるい科学的根拠の無いarbitraryな重みづけを行って各症状別のスコアを単純加算して脳卒中重症度としている.しかし其のいずれも定量的な重症度とは程遠い.そこで本学会においては重みづけのある真の定量的脳卒中スケールの作成を目指して, 平成6年に脳卒中を専門とする全国主要施設の代表者を集めてStroke Scale委員会を発足させた.以来3年に及ぶ各委員および所属施設スタッフの献身的努力によって, まず第一ステップとして脳卒中急性期の重症度スケールが完成した.このスケールは評価者間の差, 同一評価者の反復による差の検定により信頼性, 再現性の問題もクリアーしており, 且つ各評価項目の重みづけも世界で始めてconjoint analysisの応用により完成し, 真の意味で定量的なスケールということが出来る.従って本スケールによって判定されたスコアは数量として統計的にも処理することが可能である.このような定量的スケールは他に類を見ず, 国内外で久しく待望されていたものである.そこで本委員会においては, 其の緊急必要性の観点から, 詳細な原著論文としての発表に先立って, 取り合えず其の結論のみをすぐ使用できるような形で発表することにした.会員諸氏におかれては自由にこのスケールを試用しこれに対するご意見を寄せていただきたい.ただしこのスケールは全体として完成しているものであり, 其の部分的使用ないし改変は本スケールの価値を無にするので認められない.なおこのスケールの版権は調査票を含めて, 日本脳卒中学会Stroke Scale委員会に所属するものであることを付記する.現在第二のステップとして脳卒中慢性期における運動障害および高次機能障害の重症度スケールの作成に着手したことを合わせて報告する.
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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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