脳卒中
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クモ膜下出血急性期における体液中のcyclic AMP濃度
大田 英則冨永 詩郎鈴木 明文伊藤 善太郎村上 松太郎
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1980 年 2 巻 3 号 p. 291-298

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抄録

脳血管攣縮 (vasospasm) にcyclic AMPの関与が考えられている.急性期破裂脳動脈瘤10例において, 肘窩静脈, 内頚静脈球, および大腿動脈より採血した血液と, 髄液についてcompetitive pTotein binding methodによりcyclic AMP濃度を測定した.3ヵ所から採取した血漿中cyclic AMP濃度は早期に高値を取り時間経過とともに正常値に復した.うち内頚静脈球血漿中のcyclic AMPが他部位のそれより高値をとり, このことは脳内からのcyclic AMPの遊出を示しているものと考えられた.発症早期に高値を取るものほどvasospasmの出現率が低く, 両者の関係を示唆するものと考えられた.髄液中cyclic AMPは発症後次第に増加する傾向を見た.cyclic AMPはクモ膜下出血発作とvasospasmに関与して変動すると考えられるが, その詳細なメカニズムには不明な点が多く, 今後さらに検討を要する課題と言えよう.
1.頭蓋形成術施行2例において,術後1時間後の肘窩静脈血漿中のcyc1icAMP濃度は著増したが,12時間後には正常範囲に復した.
2.クモ膜下出血例において,発症後数日間,肘窩静脈血漿中のcyclic AMP濃度は正常域値を超えることが多いが,手術や脳血管攣縮の有無にかかわりなく,発症10日後には,ほとんどの症例で正常値に復した.クモ膜下出血の重症度との関連は認められなかった.
3.肘窩静脈血漿中のcyclicAMP濃度が,発症4日までに高値をとる例では,経過中脳血管攣縮を発生することが極めて少なかった.
4.髄液中cyclic AMP濃度は2週間後までに次第に増加,高値を持続する傾向がみられたが,その絶対値は症例によって異なり,重症度や脳血管攣縮との相関もみられなかった.
5.血漿中cyclicAMP濃度の採血部位別の差をみると,内頚静脈球の値が他の部位に比して高値をとり,大腿動脈と肘窩静脈はほぼ同じレベルであった.本稿の大要は,北海道脳神経外科懇話会,東北脳神経外科集談会,新潟脳神経外科懇話会,北陸脳神経外科集談会の連合会,第1回学術集会,1977.札幌にて発表した.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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