抄録
脳血管障害例の脂質代謝の変動をアポ蛋白面から検討する目的で, TIA, RINDを含む虚血性脳血管障害81例のアポA-I, A-IIを測定し, HDL・コレステロール (以下HDL・C) その他の動きと対比検討した.アポA-Iは脳梗塞急性期にHDL・Cとよく相関して有意な低下を示すが, その後HDL・Cに先立って, 3ヵ月以内に著明に改善した.
すなわち, 何らかの原因によるアポA-Iの減少が脳梗塞発症の直接要因であり, また発症後の回復過程にもHDL・Cより深く関与していることが示唆された.アポA-IIも脳梗塞急性期に軽度の低下を示したが, その差は有意ではなく, HDL・Cとの相関もみられなかった.一方, TIAやRINDではアポA群の変動はみられず, これら小発作の発症には, 脂質代謝以外の要因がより大きな役割を演ずるものと思われた。以上, アポA-I蛋白は脳梗塞の発症予測因子として, また経過判定指標として有用と考える.