動物の循環器
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原著
脚ブロックを示した僧帽弁閉鎖不全症罹患犬における房室伝導系の病理組織学的変化
金重 辰雄中尾 周小山 秀一広瀬 昶町田 登
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2006 年 39 巻 1 号 p. 18-25

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抄録
僧帽弁閉鎖不全症罹患犬における脚ブロックの発生にかかる形態学的基盤を明らかにする目的で,生前に左脚ブロック(症例1および2)あるいは右脚ブロック(症例3)を示した10~15歳の僧帽弁閉鎖不全症罹患犬3例の心臓について,連続切片作製法により房室伝導系を中心に組織学的検索を実施した。全例の僧帽弁および三尖弁に粘液腫様変性ならびに線維組織あるいは線維脂肪組織増生が中等度~重度に観察された。同病変は弁膜にとどまらず求心性に進展して中心線維体基部から心室中隔膜性部にまで波及し,中心線維体の部分的な融解・変形をもたらしていたが,その下部を走行するヒス束貫通部には軽微な傷害が認められたのみであった。一方,心室中隔上部の左右両側に位置する心内膜には,全例において軽度~重度の変性性および硬化性変化が生じており,同部位を走行するヒス束分岐部~左脚および/あるいは右脚の上部を傷害していた。その結果,特殊心筋線維は種々の程度に変性・萎縮ならびに脱落・消失し,線維組織あるいは線維脂肪組織によって置換されていた。刺激伝導系病変(軽度~重度:+~+++)がみられた部位は,症例1ではヒス束分岐部の末端(+),左脚の上部(++);症例2ではヒス束貫通部の末端(+),ヒス束分岐部のほぼ全長(+),左脚の上部(+++);症例3ではヒス束分岐部の末端(+),左脚の上部(+),右脚の上部(+++)であった。このように,脚ブロックを示した3例ではいずれも病変は脚に主座しており,心電図学的異常の発生機序が形態学的側面から裏づけられた。
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© 2006 日本獣医循環器学会
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