粥状動脈硬化症の早発とそれに伴う心筋梗塞の発生を特徴とするヒトの遺伝性疾患,すなわち家族性高コレステロール血症の動物モデルとして,WHHL (Watanabe heritable hyperlipidemic)ウサギとKHC (Kurosawa and Kusanagi-hypercholesterolemic)ウサギが系統化されている。WHHLウサギの冠状動脈にみられる粥状硬化病変に関しては詳細な情報が得られているが,KHCウサギについては体系的な形態学的検索はなされていない。そこで,KHCウサギの冠状動脈病変を質的・量的に評価する目的で,4~36カ月齢のKHCウサギ83羽の心臓を病理組織学的に検索した(4~6カ月齢群15例,10~12カ月齢群35例,16~18カ月齢群11例,22~24カ月齢群13例,34~36カ月齢群9例)。その結果,壁外冠状動脈では,4~6カ月齢の段階ですでに泡沫細胞の蓄積を伴う内膜肥厚がみられ,月齢を経るに従って細胞外脂質沈着や内弾性板の崩壊を伴ったより重篤な内膜肥厚を示すようになった。このような粥状硬化病変の発生率は,4~6カ月齢:20%,10~12カ月齢:26%,16~18カ月齢:64%,22~24カ月齢:62%,34~36カ月齢:89%であり,月齢とともに増加した。壁内冠状動脈の粥状硬化病変は質的に壁外冠状動脈のそれと一致していたが,発生月齢ははるかに遅く,また発生率は低い傾向にあった(4~6カ月齢:0%,10~12カ月齢:3%,16~18カ月齢:36%,22~24カ月齢:23%,34~36カ月齢:56%)。本検索結果をWHHLウサギの報告と比較すると,壁外および壁内冠状動脈の病変に質的な差は認められないものの,病変発生率に違いのある可能性(WHHLウサギ>KHCウサギ)が示唆された。
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