日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
破裂性腹部大動脈瘤の治療指針—とくに持続出血例に関する検討から—
古屋 隆俊西蔭 誠二宮原 拓也北野 健太郎
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2007 年 16 巻 3 号 p. 555-561

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抄録
われわれは過去14年間に94例の破裂性腹部大動脈瘤(RAAA)を経験した.救急外来の死亡10例を除く84手術例に対して,迅速診断法(急激な腹痛・腰背部痛 + 意識消失やショックの既往 + エコーで動脈瘤 = RAAAと診断)により速やかに手術を行ってきたが,とくに来院時診断の有無(未診断群と既診断群)と持続出血型(造影剤血管外漏出群:7 例,血腫拡大群:13例,入院破裂群:7 例)とに焦点を当てて成績を検討した.Fitzgerald分類(F-2群などと表記)の内訳はF-1群:F-2群:F-3群:F-4群 = 8 例:9 例:57例:10例,ショック例は13%:56%:86%:90%,死亡率は 0%:0%:32%:40%であった.F-2群~F-4群の76例に関して,来院時未診断群36例(47%)と既診断群40例(53%)とでは来院-執刀時間が既診断群で有意に短い(114分:60分)以外は周術期データに差はないが,死亡率は未診断群が有意に不良であった(44%:15%,p = 0.005).持続出血型の検討で,入院-大動脈遮断時間は造影剤血管外漏出群:血腫拡大群:入院破裂群 = 331分:356分:61分,手術データに有意差はないが,入院死亡率は71%:23%:43%,造影剤血管外漏出群は安定型に比べ有意に不良(p = 0.007)で,入院破裂群も死亡率が高かった.RAAAにおいては大出血の時期,程度や速度が予後に関係するがこれらは予測不能であり,あらゆる努力をしても救命不可能な患者がいることも事実である.それでも迅速な診断と手術室移送が可能な施設の態勢を整えることと,速やかな大動脈遮断と確実な血行再建技術への不断の努力は,RAAAの手術成績向上に必要な条件である.
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