日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
下大静脈血栓症を合併した腹部大動脈瘤に対する 1 手術治験例
達 和人鎌田 聡笠原 勝彦田中 佐登司岡山 尚久
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ジャーナル オープンアクセス

2009 年 18 巻 5 号 p. 551-554

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抄録

深部静脈血栓症(DVT)の原因としてさまざまなものが挙げられるが,腹部大動脈瘤(AAA)の下大静脈(IVC)圧迫による報告は少ない.症例は62歳,男性.両下肢浮腫にて来院.CT検査で最大径7.3cmの腎動脈下AAAを認めた.IVCはAAAに圧迫され,血栓閉塞していた.緊急入院,IVCフィルターを留置後,ヘパリン12000単位 / 日の持続点滴で下肢浮腫は著明に改善した.手術は腹部正中切開にて瘤へアプローチ,I 字型人工血管置換術を施行した.術後経過は良好,MR angiographyを施行,グラフトに問題はなかった.下大静脈造影検査,両下肢静脈造影検査にて血栓が残存していたため,IVCフィルターを永久留置し,術後17日目に軽快退院となった.AAAの圧迫により生じたと考えられるIVC血栓閉塞は稀である.IVCフィルターを術前に留置することで安全に人工血管置換術を施行することができた.

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