抄録
膝関節周囲の鈍的外傷に伴う膝窩動脈損傷は稀であるが,下肢切断に至る例が多いと報告されている.われわれは膝関節の鈍的外傷後に膝窩動脈閉塞を来したが早期の診断と治療により軽快した1例を経験したので報告する.症例は37歳,女性.運動中に右膝関節を過伸展し当院へ搬送された.右下腿に冷感と軽度腫脹を認め,右膝窩動脈の拍動は触知できたが足関節レベルでの下腿動脈の拍動は触知できなかった.下肢血管造影CT検査にて右脛骨近位端骨折と右膝窩動脈の閉塞を認めたため,同日,緊急血行再建と骨接合術を施行した.術中,約2 cm長の膝窩動脈の挫滅部を認め,これを切除し,端端吻合にて血行再建を終了した.阻血時間は約6時間で,術後経過は良好であった.膝関節周囲の鈍的外傷症例においては膝窩動脈損傷の合併も念頭に置き速やかな処置が要求されると考えられた.