抄録
症例は50歳男性.46歳時に慢性大動脈解離(DeBakey IIIb)で近位下行置換術,47歳時に胸腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術,腹部4分枝再建,分枝型グラフト術を施行した.今回,下行,胸腹部間の残存大動脈瘤が62 mmに拡大し手術目的で入院となった.二度の左側開胸手術後の強固な癒着による肺損傷のリスクを考慮しステントグラフト治療を施行した.さらに瘤のdistal neckが短くステントグラフト遠位端ランディングゾーンが前回胸腹部人工血管の腹部分枝を覆うため脾動脈,上腸間膜動脈へのバイパス後にステントグラフトを留置するハイブリッド治療を行い良好な結果を得た.胸部下行および胸腹部大動脈瘤術後のグラフト間残存瘤に対するハイブリッド治療は,ステントグラフト遠位端のランディングゾーンの自由度が広がり,左側開胸再手術において癒着剥離による肺損傷が予想される症例では安全かつ低侵襲な治療法であると示唆された.