日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
リザーバー感染による右上腕動脈仮性動脈瘤の1例
渡辺 正明村松 賢一
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キーワード: 仮性動脈瘤, 上腕動脈
ジャーナル オープンアクセス

2011 年 20 巻 1 号 p. 39-42

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抄録
症例は85歳,男性.肝細胞癌のため2009年6月右上腕動脈から化学療法肝動注用リザーバー埋め込み術が施行され肝動注化学療法が開始された.同年8月右肘部の発赤,腫脹ならびに疼痛を来し,リザーバー留置部の感染が疑われ入院となった.その後同部に拍動性腫瘤が出現し徐々に出血を繰り返したがカテーテル挿入部の上腕動脈仮性動脈瘤と診断された.抗生物質の点滴静注により感染は軽減したが,リザーバーカテーテルの露出も認めたためリザーバーおよびカテーテルを抜去した.径20 mmの仮性動脈瘤内は血栓で充満しておりこれを切除した後充分トリミングした上腕動脈を端々吻合した.術後軽度浮腫が出現したが感染の再発もなく経過した.上腕動脈領域は側副血行の発達が不十分とされ,上腕動脈からカテーテル挿入によるリザーバー留置は虚血の合併症が報告され逆に感染出現は大腿動脈経由に比し少ない.今回感染を契機として発症した上腕動脈仮性動脈瘤を経験したがその頻度は稀であり報告した.
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