2011 年 20 巻 5 号 p. 767-771
陰茎癌は高率に鼠径部リンパ節転移をきたし,しばしば大腿動脈から出血をきたす.症例は73歳,男性.陰茎癌にて陰茎部分切除術,右鼠径部腫瘤切除術,両側鼠径部リンパ節郭清術後,二期的に骨盤リンパ節郭清術を施行されていた.今回右鼠径部リンパ節転移腫瘍が右大腿動脈外膜に浸潤し,腫瘍が自潰し,皮膚と瘻孔を形成し,大腿動脈破綻の危険が高いと判断された.本症例は複数回手術のため直達的な手術は困難と判断,血管内治療を施行した.対側大腿動脈アプローチで,右大腿深動脈をコイル塞栓後,同側大腿部の浅大腿動脈から,中枢側のみPalmazステントで固定したGore-tex graftを内挿し,中枢側は外腸骨動脈にステントで固定,末梢側は浅大腿動脈に縫合固定した.術後3カ月で癌死するまで,大腿動脈からの出血はなかった.