日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
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原著
下肢静脈瘤に対する980 nmレーザーを用いた標準的血管内レーザー治療
広川 雅之栗原 伸久
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 21 巻 4 号 p. 583-588

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抄録
【目的】2011年より本邦にて保険適用となった波長980 nmレーザーによる血管内レーザー治療(EVLA)を行った症例を検討し,その初期成績を報告する.【対象と方法】2011年1月より4月までに当院でEVLAを行った大伏在静脈(GSV)に弁不全を有する1次性下肢静脈瘤症例319例354肢を対象とした.レーザー装置は波長980 nmの半導体レーザー(ELVeSTM レーザー)を用い,超音波観察下経皮アプローチでレーザーファイバーを静脈内に挿入,TLA(tumescent local anesthesia)麻酔下に浅腹壁静脈合流部直下よりレーザーファイバーを用手的に牽引しながらレーザー出力8–10 Wで静脈を焼灼した.術後48時間以内,1週間後,1カ月後および4カ月後に合併症および超音波検査でGSVの閉塞の有無を観察した.【結果】平均手術時間は34.9分,照射GSV長は36.3 cm,平均照射エネルギーは86.3 J/cmであった.DVTや皮膚熱傷などの重大な合併症は認められなかった.大腿部疼痛は136肢(38.4%),皮下出血は230肢(65.0%)に認められたが,すべて術後1カ月目には消失した.EHIT(endovenous heat-induced thrombus)は55肢(15.5%)に認められた.Kaplan-Meier法による累積閉塞率は術後7カ月で98.1%であった.【結論】波長980 nmレーザーによるEVLAは安全で日帰り手術に適した治療であり,健康保険に収載されたことにより血管外科医が身につけるべき標準的術式となると考えられる.
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