日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
Debranchingを併用した胸部ステントグラフト留置術の中期遠隔成績
森下 清文柴田 豪佐賀 俊文氏平 功祐大堀 俊介馬場 俊雄馬渡 徹
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2013 年 22 巻 3 号 p. 609-613

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抄録

要  旨:【目的】75歳以上の高齢者,およびそれ以下の年齢でも重篤な合併症を有する弓部大動脈瘤症例はdebranchingを併用したステントグラフト留置術(D-TEVAR)を第一選択としている.この方針の妥当性を早期,中期成績から検討した.【対象と方法】2012年5月まで当施設でD-TEVARを意図した56例を対象とした.男性44例,女性12例で,平均年齢は75±9歳であった.Debranching手術の内訳は腋窩-腋窩動脈バイパス術28例,total debranching 20例,腋窩-腋窩-左総頸動脈バイパス術8例であった.このうち,二期手術を予定していた1例は早期死亡したためステントグラフト留置術に到達できなかった.ステントグラフトの中枢landing zoneはZ0に掛かるもの13例,Z1が14例,Z2が28例であった.術前のJapan scoreは15±15%であった.【結果】早期死亡を3例に認めた(5%).術後合併症は脳梗塞2例,対麻痺1例,不全対麻痺1例,大動脈穿孔1例があった.術直後のエンドリークを55例中18例(33%)に認めたが,6カ月以上の追跡が可能であった46例ではエンドリークが6例(13%)に減少した(p<0.05).追加ステントを3例に行った.1年生存率は83±7%で3年生存率は77±17%であった.またEvent-free生存曲線は1年目が76±7%,2年目が72±7%,3年目が50±14%であった.【結語】Debranchingを併用したステントグラフト留置術の早期成績は良好であったが,中期的にはさまざまな合併症が起こるので注意が必要である.

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