抄録
要旨:腹部アンギーナに対するバイパス術においては,用いるグラフト,バイパス経路,再建動脈の選択が問題となる.自家静脈を用いて腹腔動脈頭側の腹部大動脈から順行性バイパスを行った2 例を経験した.症例1 は61 歳,男性で,食後腹痛,羸痩の精査にて腹腔・上腸間膜動脈の閉塞を認めた.大伏在静脈のcomposite graft により,頭側大動脈から総肝動脈,上腸間膜動脈へバイパスした.膵液のため術後3 カ月間絶食としたが,グラフトは良好に開存し,症状は消失,順調な体重増加をみた.症例2 は断続的腹痛と水溶性下痢が主訴の65 歳,男性で,腹腔・上腸間膜動脈の閉塞,下腸間膜動脈起始部の高度狭窄および腹部大動脈瘤を認めた.静脈グラフトで大動脈から総肝動脈へバイパスし,下腸間膜動脈血行再建を伴う腹部大動脈人工血管置換を行った.術後検査にてグラフトの開存と側副血行を介する上腸間膜動脈への良好な血流を認め,症状は消失した.