2017 年 26 巻 2 号 p. 117-120
50歳男性.数年前より歩行時の左下肢のだるさを自覚していた.左下肢の痺れ,冷感を自覚し当院受診し,造影CTにて左大腿動脈の高度狭窄を認め,血管エコーにて血栓症と診断され,緊急血栓除去術を施行したが,血管内腔には血栓を認めず,左大腿動脈の全周を取り囲むようにゼリー状の物質が貯留しており,その圧排にて血管が閉塞していた.ゼリー状の物質を除去し,手術は終了した.症状は軽快し独歩退院となったが,術後47病日目に同症状が出現し,造影CTにて再度左大腿動脈の狭窄を認め,MRIにて壁内の液体貯留による血管狭窄と診断され,血行再建および診断確定のため,血管切除および人工血管置換術を施行した.術後の病理検索にて股関節由来のガングリオンによる圧排のための血管狭窄と診断された.稀な病態ではあるが,常にその可能性も考慮しつつ,治療を行う必要がある.