2019 年 28 巻 2 号 p. 137-140
症例は76歳男性.他院にて両側総腸骨動脈領域の閉塞性動脈硬化症に対し,腹部大動脈遠位部から右総腸骨動脈,左外腸骨動脈までステント留置術を施行された.ステント留置1カ月後に背部痛を認めたため造影CTを施行したところ,左総腸骨動脈ステント留置部に最大短径43 mmの動脈瘤を認め,緊急手術目的に当科紹介となった.同日,留置されたステントを抜去し,Y型人工血管置換術を施行した.動脈瘤に一致して外膜の欠損部を認め,仮性動脈瘤と診断した.本症例ではステント留置時にガイドワイヤーが血管壁内を通過しており,機械的損傷が仮性瘤形成の原因であったと考えられる.さらに抗血小板療法中であったことが仮性瘤の拡大に関与したと考えられる.血管内治療による機械的損傷での仮性動脈瘤形成は総腸骨動脈領域では稀であり,文献的考察を加え報告する.