2019 年 28 巻 2 号 p. 133-136
71歳男性.乗用車との接触事故で外傷性胸部大動脈損傷,および不安定型骨盤骨折を受傷した.当初は保存加療の方針としていたが,フォローアップのCTで胸部大動脈の解離腔が拡大したため,受傷5日後にTEVARを施行した.翌日,骨盤骨折に対して創外固定を行ったが,術後MRSAを起因菌とする,右股関節炎と腸腰筋膿瘍を発症した.長期間の抗生剤投与により全身状態は改善傾向となっていたが,術後6カ月が経過した頃,39度の発熱と炎症反応高値を認めた.CTではステントグラフト周囲に液体貯留像を認めた.血液培養からMRSAが同定されたため,ステントグラフト感染が疑われた.術前に抗生剤投与を行い,炎症反応が低下した状態で手術を行う方針とした.ALPSアプローチによるステントグラフト抜去,人工血管置換術,および大網充填術を施行した.術後6週間の抗生剤投与を行い,現在も感染再燃は認めていない.