日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
外傷性下大静脈損傷に対してステントグラフト内挿術を施行した一例
楢山 耕平 森下 清文馬場 俊雄新垣 正美柴田 豪
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 28 巻 3 号 p. 205-208

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抄録

症例は自殺企図による穿通性腹部外傷のため出血性ショックをきたした48歳男性である.緊急CT検査にて腸管損傷,膵頭部損傷,および下大静脈(IVC)損傷を認めたため,当科による下大静脈止血術後に消化器外科による膵頭十二指腸切除術,腸管修復術を施行した.ステントグラフト内挿術は簡便性,即効性の点で優れ,また次に控える外科手術に対しても出血傾向を増長しないことより術式として選択した.術前CTにおけるIVC計測結果からZenith TX2 extension TBE-24-80-PF(Cook Medical, Japan)を使用した.術中造影でIVC損傷部位,および右腎静脈を確認した後にステントグラフトを留置した.確認造影でエンドリークは認めなかった.術後,危惧された感染を起こすことなく患者はリハビリテーション目的に転院となった.外傷性IVC損傷に対するステントグラフト内挿術は人工心肺や多量のヘパリンを使用することなく良好な止血効果を得ることができる有望な治療方法と考えられた.

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