2019 年 28 巻 3 号 p. 179-182
遺残坐骨動脈は稀な先天異常であり,頻度は0.01~0.06%と報告されている.今回われわれは遺残坐骨動脈の急性閉塞の手術例を経験したので報告する.症例は72歳,女性.突然の右下腿疼痛,冷感,痺れが生じ,急性動脈閉塞症が疑われ当院受診した.造影CTにて大腿の一部で不整な血栓を伴う動脈瘤を合併した遺残坐骨動脈を認めたが,外腸骨–大腿動脈の発達が悪かったため,右内腸骨動脈–膝窩動脈の閉鎖孔バイパス術ならびに下腿血栓除去の方針となった.手術は仰臥位で,中枢は右下腹部斜切開による後腹膜アプローチにて右内腸骨動脈を露出し,末梢は膝関節直上で内側アプローチにて膝窩動脈を露出した.人工血管を用いて上殿動脈分岐直後で端側吻合し,閉鎖孔経由で膝窩動脈と端々吻合施行した.遺残坐骨動脈は中枢と末梢で結紮処理した.術後検査でグラフトは良好に開存し,瘤は血栓閉塞している.