2019 年 28 巻 3 号 p. 249-253
【目的】原発性上肢深部静脈血栓症は稀な疾患であり,悪性腫瘍など後で原因が判明することが少なくない.初診時に原発性と考えられた上肢深部静脈血栓症に対し,その病態を比較検討した.【方法】初診時に原発性と考えられた上肢深部静脈血栓症の自験例10例につき検討した.【結果】運動の関与がある症例は2例,関与がない症例は8例だった.運動の関与がある症例では,血栓は鎖骨下静脈に限局したが,1例では肺塞栓を認めた.運動の関与がない症例のうち3例では,後に腫瘍性疾患が判明し(胃癌2例,特発性好酸球増多症候群1例),これらは初診時のD-dimerが高かった.胃癌が判明した2症例は7カ月以内に死亡し,予後不良だった.【結論】原発性が疑われる上肢深部静脈血栓症において,運動と関係がなく特発性血栓症と考えられても腫瘍性疾患が潜在している可能性があり,注意深い検索が望まれる.