2020 年 29 巻 2 号 p. 87-91
症例は58歳男性.異型大動脈縮窄症に対し,10年前に他院にて左腋窩動脈–両側大腿動脈バイパス術が施行されていた.1年前より高血圧性心疾患の進行から心不全を繰り返すようになったため当院紹介となり外科治療の方針となった.手術は右半側臥位にて左第7肋間開胸・後腹膜アプローチによる胸部下行大動脈–腹部大動脈バイパス術と,大伏在静脈を用いた両側腎動脈血行再建術を施行した.術後合併症はなく経過良好であった.術前10.6(ng/mL/h)であったレニン活性は術後1.1(ng/mL/h)に著明に低下し,術前心エコーで左室駆出率(LVEF)は28%であったが,術後1カ月で40%へと改善を認めた.異型大動脈縮窄症の症例で腹部臓器還流不全を合併する場合には,腋窩動脈–両側大腿動脈バイパス後に腎血管性高血圧による心不全が悪化することがあり,腎動脈の血行再建が有効であった.