2020 年 29 巻 4 号 p. 265-269
症例は76歳男性.4年前に75 mmの紡錘状腹部大動脈瘤に対してEVARを行い,腰背部痛を主訴に前医を受診し切迫破裂を疑われ当院に搬送された.CT検査で動脈相,静脈相共にendoleakは認めなかったが,腹部大動脈瘤は90 mmと拡大を認め切迫破裂と診断し緊急手術を行った.瘤径拡大の原因が不明であり,またステントグラフト中枢側の大動脈遮断や腹部分枝の再建などが必要になる可能性を考慮し,胸腹部大動脈瘤手術に準じたアプローチで手術を行った.ステントグラフトを摘出し,腹部大動脈置換術とbare stentのhookによる左腎動脈損傷を認めたため左腎動脈再建術を行った.術後経過は良好で独歩退院した.Type V endoleakによる瘤径拡大に対して,胸腹部大動脈瘤手術に準じたアプローチでの腹部大動脈置換術を経験したので報告する.