日本血管外科学会雑誌
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Print ISSN : 0918-6778
症例
術後残存胸部大動脈瘤肺穿破において慢性甲状腺炎に合併した大動脈中膜粘液腫様変化を認めた一剖検例
亀田 柚妃花 加藤 全功井上 凡今井 康雄
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2020 年 29 巻 4 号 p. 253-256

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抄録

症例は68歳男性.弓部大動脈瘤に対して左鎖骨下動脈再建を伴うOpen stent graft内挿術の既往あり.また,甲状腺機能低下症に対しホルモン補充療法中であった.手術から約3カ月後,喀血および多量血胸による出血性ショック,緊張性気胸で死亡した.病理解剖にて残存大動脈瘤肺内穿破を認めた.病理所見では,大動脈瘤壁で中膜の完全消失が見られた.瘤壁以外でも大動脈中膜に粘液腫様変化を認めた.甲状腺は慢性甲状腺炎(橋本病)の所見であった.甲状腺機能低下による高コレステロール血症に起因した動脈硬化性変化や組織の粘液腫は多数報告されているが,大動脈壁の粘液腫様変化が病理学的に確認できた症例は極めて稀である.慢性甲状腺炎においても大動脈中膜病変を認める可能性があり,大動脈解離発生や瘤形成を念頭におく必要がある.

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