2020 年 29 巻 4 号 p. 249-252
稀な左側下大静脈を合併した傍腎動脈型腹部大動脈瘤(AAA)に対する胸腹部大動脈置換術を経験した.症例は79歳男性.腎動脈下腹部大動脈置換の既往がある.術前CTで上腸間膜動脈分岐部直下から最大短径80 mmのAAAを認め,また左側下大静脈は起始部から左腎静脈合流部までは大動脈の左側を上行し,そのレベルで大動脈前面を右側へ横断していた.手術はStoneyの切開と後腹膜腔アプローチで行い,左腎は前方へ脱転せずにその腹側で剝離した.部分体外循環開始後に大動脈の前方を交差する左側下大静脈を一時に離断することで大動脈瘤の全貌を得た.胸腹部大動脈置換後,離断した左側下大静脈は牛心膜ロールグラフトで再建した.剝離,体外循環の確立および再建方法に工夫を要したので報告した.