2021 年 30 巻 2 号 p. 119-123
孤立性上腸間膜動脈(SMA)解離の経過観察中に動脈瘤を形成し,持続する腹部症状と急速な瘤拡大を認め緊急手術を行った症例を経験した.症例はType B慢性大動脈解離で経過観察中の55歳男性.とくに症状なくCTにて孤立性SMA解離を認め,SMAの径は14 mmであった.1年5カ月後には26 mmと拡大し解離性動脈瘤を形成した.その1カ月後に心窩部痛が出現し瘤径が32 mmとさらに拡大したため,破裂予防目的で緊急手術を行った.動脈瘤は周囲組織と強固に癒着し,瘤壁は著明に肥厚しており炎症性動脈瘤が疑われた.動脈瘤を開放し大伏在静脈を用いてSMAと空腸動脈を再建した.術後は腸管虚血の症状を認めず経過し軽快退院した.