日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
放射線性血管障害による重症虚血肢に対し自家静脈バイパスで救肢し得た1例
髙橋 一輝 奥田 紘子吉田 博希内田 恒
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 30 巻 2 号 p. 137-140

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抄録

放射線治療の進歩は悪性腫瘍治療において大きな成果を挙げているが,晩期合併症として放射線性血管障害が問題となる.症例は57歳女性.9歳時に骨肉腫の疑いで左大腿遠位部に合計54 Gyの放射線治療を受け,55歳時に左浅大腿動脈から膝窩動脈の急性動脈閉塞を発症した.一時的に血管内治療により救肢されたが早期閉塞を繰り返し,左下肢安静時痛が持続するため当科へ紹介となった.左大腿下部から膝関節までの皮膚および皮下組織は高度な線維化により瘢痕化し,下腿リンパ浮腫を認めた.同側大伏在静脈を使用するin-situ法では瘢痕部での切開創が多くなり,創治癒不全や感染の発症が危惧されたため,対側の大伏在静脈を用いて浅大腿–膝下膝窩動脈バイパスを施行した.術後下肢血流は回復し経過は良好であった.放射線性血管障害による重症虚血肢に対し自家静脈バイパスで救肢し得た症例を経験したので報告する.

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