2021 年 30 巻 3 号 p. 179-182
犬咬傷における稀な上腕動脈の解離による急性動脈閉塞症の1例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する.症例は86歳女性.飼い犬に左上肢を咬まれ受傷.左上肢腫脹としびれ感を主訴に受診.橈骨動脈拍動触知できず,血管損傷が疑われた.皮膚に明らかな創は認めなかった.造影CTにて上腕動脈の限局性閉塞を認めた.上腕動脈の色調変化部位を切除し,自家静脈グラフト置換術を施行した.切除標本で動脈解離所見を認めた.術後1年間は抗凝固療法,以降は抗血小板製剤内服で術後8年間経過良好である.