2021 年 30 巻 3 号 p. 183-186
症例は65歳女性.定期健診のため近医を受診した際に上腹部に拍動性腫瘤を指摘され当科紹介.CT検査にて最大径70 mm大の巨大上腸間膜動脈瘤と診断.血管造影検査では右肝動脈が瘤から分岐する破格と瘤の末梢から小腸領域および結腸へ灌流する2本の分枝を認めた.手術は開腹下で上腸間膜動脈と右肝動脈は直接吻合し,瘤の末梢から出ていた2本の分枝は大伏在静脈グラフトを介して腹部大動脈と吻合した.術後経過は腸管虚血や肝障害もなく良好であった.上腸間膜動脈瘤の頻度は内臓動脈瘤でも5–8%程度と比較的稀であり,手術術式についても一定の見解は得られていない.今回われわれは,巨大上腸間膜動脈瘤に対する1手術例を経験したので文献的考察を踏まえて報告する.