日本血管外科学会雑誌
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症例
肺血栓塞栓症により心肺停止をきたした膝窩静脈静脈性血管瘤の1手術例
藤井 弘敦 福田 智奈良原 裕村田 升尾頭 厚
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2021 年 30 巻 5 号 p. 303-306

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抄録

静脈性血管瘤は頭部や下肢に見られ,大部分は無症状である.しかし,膝窩静脈静脈性血管瘤は致死的な肺血栓塞栓症の原因となるが,その症例報告は少ない.症例は既往のない21歳女性,自宅で意識消失し救急車で搬送された.精査で肺血栓塞栓症と診断された.心肺停止になったが心肺蘇生を行い自己心拍再開,同時に血栓溶解療法を行い一命を取り留めた.下肢造影CTで左膝窩静脈の内腔に血栓を伴う25 mm大の紡錘状の静脈性血管瘤が認められ,塞栓源と考えられた.深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症の再発予防目的に当院当科に紹介となった.一時的下大静脈フィルターを留置し,縫縮術を施行した.術後1年以上経過するが,瘤の再発,深部静脈血栓症は起きていない.膝窩静脈静脈性血管瘤は繰り返す致死的な肺血栓塞栓症の原因となることがあり,抗凝固療法下でも肺血栓塞栓症の再発率も高いため,膝窩静脈静脈性血管瘤の診断後は早期の外科治療が必要となる.

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