大腿動脈の仮性動脈瘤は経皮的穿刺手技の後,早期に鼠径部の拍動性腫瘤として発見される場合が多いが,腫瘤の症状なく下肢浮腫のみが初発症候となる例は稀で,術後長期間経過してから発症することも極めて稀である.仮性動脈瘤の治療では手術による修復が避けられないことも多い.その際には大伏在静脈が広く使用されるが,それが使用できない場合には手術に用いる材料について検討が必要となる.88歳男性,18年前に両側大伏在静脈を使用し,左大腿動脈から体外循環の送血を行った大動脈基部置換術を受けた既往があった.左下肢全長の浮腫を訴えて来院した.下肢動静脈超音波検査にて,左総大腿動脈内側壁に6 mm大のentryをもつ50 mm径の仮性動脈瘤を認め,総大腿静脈が圧排され静脈内に血流が観察されなかった.ウシ心囊膜パッチ(XenoSure)を用いた動脈修復術によって治療した.