2024 年 33 巻 3 号 p. 121-124
急性大動脈解離と大動脈瘤の合併は珍しくないが,急性大動脈解離と破裂性大動脈瘤が合併することは稀であり,治療方針に確立されたものはない.症例は,腹痛を主訴にした90歳,男性.造影computed tomography(CT)検査でStanford B型急性大動脈解離と破裂性腹部大動脈瘤の診断に至った.Stanford B型急性大動脈解離は胸部下行大動脈にentryを認めた.偽腔は遠位弓部大動脈から外腸骨動脈レベルまで及んでおり,とくに腹部大動脈瘤の最大拡張部分の偽腔で血管外漏出像を認めた.緊急EVARを施行した.明らかなエンドリークを認めず,手技を終了した.術後はStanford B型急性大動脈解離に対して保存的治療を行い,リハビリテーションに時間を要したものの術後34日に独歩退院した.フォローCT検査では,腹部大動脈瘤径は縮小傾向で偽腔のリモデリングも得られていた.