日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
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33 巻, 3 号
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総説
  • 前田 剛志
    2024 年33 巻3 号 p. 131-136
    発行日: 2024/05/22
    公開日: 2024/05/22
    ジャーナル オープンアクセス

    血管内治療では遠隔操作所以のトラブルを生じることがあり,時に重篤なトラブルに見舞われることがある.そのためどのような合併症が生じやすいのか,またその合併症に対するトラブルシューティングの知識が必要である.本稿では血管内治療における合併症とそのbail outについての解説を行う.

  • 根本 卓, 松浦 壮平, 櫻井 祐補, 山之内 大
    2024 年33 巻3 号 p. 143-147
    発行日: 2024/05/22
    公開日: 2024/05/22
    ジャーナル オープンアクセス

    心血管疾患の診療において,造影剤を用いて診断・治療する場面は多い.一方で,腎機能障害を併存している患者は多く,造影剤使用に苦慮する場面も多い.造影剤による直接的な尿細管障害と間接的な腎血流障害によって造影剤腎症は発症する.造影剤腎症の発症頻度は従来考えられていたよりも低いとされているが,一度造影剤腎症になると有効な治療法はなく,生命予後にも影響する可能性が指摘されている.造影剤使用前にリスク因子(慢性腎臓病・高齢・糖尿病など)を把握し,経動脈造影剤投与と経静脈造影剤投与のリスクの違いも理解しておく必要がある.リスクがある場合は,生理食塩液や重炭酸ナトリウムによる補液を行って発症予防に努め,診断できる範囲内で最小限の造影剤使用量とする必要がある.

原著
  • 齋藤 雄平, 伊藤 研悠, 都島 幹人, 板谷 慶一, 山田 敏之, 正木 祥太, 北村 浩平, 金村 徳相, 須田 久雄
    2024 年33 巻3 号 p. 115-119
    発行日: 2024/05/19
    公開日: 2024/05/19
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】欧米では脊椎手術の際,血管外科医が術野の確保,止血を担うことがあるが,本邦では行われていない.当教室が協働した前方経路腰椎椎体間固定術(ALIF)の問題点を解析し,脊椎外科とのコラボレーションに重要な点を検討した.【方法】2019年8月から2023年1月までのALIF 21例について,対象疾患,出血量,主要合併症,手術の問題点を解析した.【結果】年齢64.9±12.3歳(男性13例),手術時間234.8±68.7分,出血量197±167 mLで,19例(90.5%)でイベントなく下位腰椎前方の展開が遂行できた.2例(9.5%)に左腸骨静脈または正中仙骨静脈から出血を認め,縫合止血が困難で圧迫止血した.【結論】ALIFにおいて脊椎外科と協働する際には,創が小さく,深い術野であるため慎重な手技,判断が必要であり,整形外科的な解剖,手技も熟知することが必要である.

  • 升井 規晴, 坂本 龍之介, 池 創一, 竹内 由利子, 原田 剛佑, 末廣 晃太郎, 森景 則保, 濱野 公一
    2024 年33 巻3 号 p. 137-141
    発行日: 2024/05/22
    公開日: 2024/05/22
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】当院におけるLeriche症候群に対する血管内治療(EVT)の治療成績を明らかにすること.【方法】2001年から2022年に血行再建術を行ったLeriche症候群32例57肢を対象に開存率や術後合併症等を検討した.【結果】EVT群は20例33肢,外科手術(OS群)は12例24肢であり,EVT群の初回手技成功率は85%(18/21)であった.術後ABIはEVT群0.86±0.18, OS群0.86±0.20で両群間に有意差はなく,EVT群で合併症を認めなかった.Fontaine IV度症例を除く術後平均在院日数はEVT群で有意に短く(9±5日vs 18±7日,p=0.0016),術後5年間の累積開存率は両群間に有意差を認めなかった.【結論】Leriche症候群に対するEVTは合併症なく在院日数を短縮可能であり,外科手術と同等の治療効果が期待できる.

症例
  • 松本 佳奈, 有馬 大輔, 神藤 由美, 石神 直之, 鈴木 一周
    2024 年33 巻3 号 p. 121-124
    発行日: 2024/05/19
    公開日: 2024/05/19
    ジャーナル オープンアクセス

    急性大動脈解離と大動脈瘤の合併は珍しくないが,急性大動脈解離と破裂性大動脈瘤が合併することは稀であり,治療方針に確立されたものはない.症例は,腹痛を主訴にした90歳,男性.造影computed tomography(CT)検査でStanford B型急性大動脈解離と破裂性腹部大動脈瘤の診断に至った.Stanford B型急性大動脈解離は胸部下行大動脈にentryを認めた.偽腔は遠位弓部大動脈から外腸骨動脈レベルまで及んでおり,とくに腹部大動脈瘤の最大拡張部分の偽腔で血管外漏出像を認めた.緊急EVARを施行した.明らかなエンドリークを認めず,手技を終了した.術後はStanford B型急性大動脈解離に対して保存的治療を行い,リハビリテーションに時間を要したものの術後34日に独歩退院した.フォローCT検査では,腹部大動脈瘤径は縮小傾向で偽腔のリモデリングも得られていた.

  • 門田 悠暉, 野﨑 功雄, 畝 大, 吉田 賢司, 古田 めぐみ, 中井 幹三
    2024 年33 巻3 号 p. 125-130
    発行日: 2024/05/22
    公開日: 2024/05/22
    ジャーナル オープンアクセス

    上腸間膜動脈(SMA)閉塞は稀な疾患であり,腸管虚血による腹痛を起こし手術が必要なことがある.また上腸間膜動脈瘤(SMAA)は稀だが,破裂のリスクが高く,破裂した場合の死亡率の高さから介入が必要とされる.SMA閉塞やSMAA切除では血行再建や腸管切除が必要な場合があるが,腸管血流の評価方法は確立されていない.SMA閉塞および感染性SMAAに対する開腹手術で,術中にインドシアニングリーン(ICG)蛍光法を用いて小腸の血流を評価した症例を報告する.症例は腹痛を主訴とする63歳男性で,感染性心内膜炎によるSMA閉塞および感染性SMAAと診断された.開腹手術でSMAA切除後に,ICG蛍光法を用いた小腸の血流評価を行い,血行再建および腸管切除は不要と判断した.術後腹痛は消失し,合併症の併発なく術後11日目に前医に転院した.術中ICG蛍光法はSMAA切除における腸管血流の評価に有用と考えられた.

  • 守内 大樹, 深田 睦, 西村 潤一
    2024 年33 巻3 号 p. 149-153
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2024/06/01
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は81歳男性,間質性肺炎で在宅酸素療法をしておりステロイドを内服していた.またBMI 15.6と著明なるい痩を認めた.嗄声精査のためのCTで最大径70 mmの弓部大動脈囊状瘤を認め当科に紹介となった.TEVARを選択する場合2 debranchが必要な症例だったが,るい痩が著明で前胸部に人工血管を挿入すると,将来的な圧迫による潰瘍,人工血管感染などが危惧された.そのためperiscope sandwich法を用いた1 debranch TEVARとすることで,前胸部の人工血管挿入を回避することができた.本法の長期成績は不明だが,既存のデバイスのみで可能であり,緊急時にも使用できる有用な選択肢の治療と考えられた.

  • 西本 幸弘, 森崎 晃正, 左近 慶人, 高橋 洋介, 柴田 利彦
    2024 年33 巻3 号 p. 155-160
    発行日: 2024/06/08
    公開日: 2024/06/08
    ジャーナル オープンアクセス

    左椎骨動脈大動脈起始(ILVA)は弓部分枝で多い破格であるが,debranching TEVARで再建した報告は少ない.今回ILVAを伴う弓部大動脈疾患を3例認め,症例1は66歳女性,症例2は29歳女性.いずれも大動脈峡部の損傷に対し,左総頸動脈(LCCA)–左鎖骨下動脈(LSCA)バイパス,ILVAをLCCAに直接吻合し,症例1では1-debranching TEVAR, 症例2では1-fenestrated, 1-debranching TEVARを行った.症例3は80歳男性.遠位弓部囊状瘤に対し,LCCA–LSCAバイパス,1-debrancing TEVARを行った.ILVAは距離が不足し,大伏在静脈で延長した.これら3例に術後明らかな神経学的合併症を認めなかった.ILVAは比較的容易に再建でき,良好な結果を得ることができた.

  • 横山 倫之, 沼口 亮介, 石川 和徳, 古屋 敦宏, 新垣 正美
    2024 年33 巻3 号 p. 161-165
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は75歳男性.腹部大動脈瘤(AAA)に対し11年前に当科でTalentを用いてステントグラフト内挿術(EVAR)を施行した.前医でType IIエンドリーク(EL)による約10 mmの瘤径拡大を認め当科に紹介となり,下腸間膜動脈コイル塞栓術を施行した.5カ月後に突然の腰痛を発症し造影CTでステントグラフト右脚からのELによるAAA破裂を認め,緊急開腹人工血管置換術を施行した.術中所見ではTalent右脚近位で約10×5 mmの穿孔を認め,Type IIIb ELによる破裂と診断した.経過は良好で術後14日で退院となった.治療後11年目の巨大fabric tearによるType IIIb ELによる破裂症例を経験したので報告した.

  • 立川 貴大, 磯田 竜太郎, 石田 敦久, 森田 一郎
    2024 年33 巻3 号 p. 167-171
    発行日: 2024/06/26
    公開日: 2024/06/26
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は68歳男性.37年前の大動脈–両側大腿動脈バイパス術以降3回の再手術を施行されていた.今回は左鼠径部の非拍動性腫瘤が徐々に増大し,精査の結果,左大腿動脈吻合部瘤と診断され,手術目的で入院となった.手術は劣化し生じた吻合部に及ぶ人工血管瘤と総大腿動脈・外腸骨動脈を一塊にして摘出し,過去の人工血管と総大腿動脈を新たな人工血管(HEMASHIELD)を用いて置換した.さらに外腸骨動脈末梢端とHEMASHIELDをPROPATENを用いてバイパスを作製した.最後に左脚の残存する人工血管を補強するためにExcluder legを追加留置した.過去の劣化した人工血管に対する手術としてハイブリッド治療は術中の出血コントロールの観点などからも有効であると考えられた.

  • 小川 達也, 山本 剛, 吉田 文哉, 大谷 悟
    2024 年33 巻3 号 p. 173-178
    発行日: 2024/06/26
    公開日: 2024/06/26
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は79歳女性.胸背部痛および腹痛を自覚し救急搬送された.造影CTで上腸間膜動脈(SMA)閉塞を伴う急性大動脈解離Stanford Aを認め,緊急手術を行った.まず開腹して大伏在静脈による左総腸骨動脈–上腸間膜動脈バイパス術を行い,上行部分弓部大動脈置換術を施行した.腸管の色調は不良であったが,ICG蛍光法による腸管血流評価を施行し保存的加療を選択した.翌日second look operationを施行したところ腸管の色調は改善しており,壊死小腸を約6 cm切除した.大半の腸管は温存可能であった.術後8日目より経口摂取可能となり経過良好で術後29日目に独歩退院した.腸管虚血を伴った大動脈解離に対して,本法は有効な方法と考えられた.

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