2025 年 34 巻 3 号 p. 59-64
症例は76歳男性.膀胱癌に対して経尿道的膀胱腫瘍切除術および膀胱内BCG(Bacillus Calmette-Guérin)注入療法が行われていた.その17カ月後,CT検査で不整形囊状な腎動脈下腹部大動脈瘤を指摘され,急速な拡大がみられたため緊急で腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)を施行した.経過からBCG-induced aneurysmであったと推測され術後は感染徴候なく経過していたが,4カ月後に持続する黒色便を生じ大動脈十二指腸瘻(ADF)と診断され,人工血管置換術および十二指腸部分切除,大網充填術を施行し,自宅退院となった.術後より抗生剤治療を継続していたが,術後84日目に食思不振および倦怠感を自覚し当院受診.CT検査で人工血管中枢側吻合部の破綻に伴う巨大仮性動脈瘤を指摘されたが,侵襲的治療の希望はなく入院後間もなく死亡した.