日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
34 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
症例
  • 曹 宇晨, 國井 佳文, 守内 大樹, 奥木 聡志, 小出 昌秋
    2025 年34 巻3 号 p. 53-57
    発行日: 2025/05/27
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル オープンアクセス

    EVAR後のAAA破裂は再介入が原則だが,高齢かつfrailtyの強い症例では手術リスクが懸念される.症例1はClinical Frailty Scale(CFS)6の85歳男性.6年前のEVAR後にエンドリーク(EL)はなく,来院時造影CTで少量のII型ELとFitzgerald IIの破裂を認めた.症状は速やかに軽快し保存的加療で退院.3カ月後,血腫がFitzgerald IIIに進行しchronic contained ruptureを認めたが,無症状のまま3年間経過.症例2はCFS 5の81歳男性.2年前のEVAR後にELはなく,転倒後にFitzgerald IIの破裂を認めたが造影剤漏出は不明瞭.症状は速やかに軽快し保存的加療で退院,4年間無症状.EVAR後のAAA破裂では臨床経過を踏まえ,慎重な保存的加療が選択肢となる.

  • 村岡 拓磨, 鈴木 一史, 森住 誠, 榎本 佳治, 篠永 真弓, 倉岡 節夫
    2025 年34 巻3 号 p. 59-64
    発行日: 2025/06/05
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は76歳男性.膀胱癌に対して経尿道的膀胱腫瘍切除術および膀胱内BCG(Bacillus Calmette-Guérin)注入療法が行われていた.その17カ月後,CT検査で不整形囊状な腎動脈下腹部大動脈瘤を指摘され,急速な拡大がみられたため緊急で腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)を施行した.経過からBCG-induced aneurysmであったと推測され術後は感染徴候なく経過していたが,4カ月後に持続する黒色便を生じ大動脈十二指腸瘻(ADF)と診断され,人工血管置換術および十二指腸部分切除,大網充填術を施行し,自宅退院となった.術後より抗生剤治療を継続していたが,術後84日目に食思不振および倦怠感を自覚し当院受診.CT検査で人工血管中枢側吻合部の破綻に伴う巨大仮性動脈瘤を指摘されたが,侵襲的治療の希望はなく入院後間もなく死亡した.

  • 後藤 泰孝, 山本 経尚, 藤原 克次, 合志 桂太郎
    2025 年34 巻3 号 p. 65-68
    発行日: 2025/06/05
    公開日: 2025/06/05
    ジャーナル オープンアクセス

    68歳女性.約3年前より右前腕に腫瘤を自覚し,徐々に拡大を認めた.超音波検査,造影CT上,右前腕橈側皮静脈に最大短径13 mm長さ60 mmの静脈性血管瘤(VA)を認めた.その後経過観察をしていたが,2ヶ月後に血栓化による疼痛が出現したために超音波検査後に瘤切除を行った.上肢のVAは比較的稀な疾患で原因が不明であることが多い.橈側皮静脈は採血などで穿刺されやすい部位であり,頻回の穿刺が原因の一つであると考えられた.

  • 鈴木 博之, 中山 真悠子, 小﨑 浩一, 関 宏, 安 健太
    2025 年34 巻3 号 p. 69-73
    発行日: 2025/06/26
    公開日: 2025/06/26
    ジャーナル オープンアクセス

    感染性仮性動脈瘤切迫破裂への緊急末梢血管用ステントグラフト内挿術で瘤壁減圧をはかり,二期的な根治術で良好な経過を得たので報告する.症例は,77歳,男性.左総大腿動脈(CFA)閉塞に対し2023年7月に左CFA石灰内膜摘除・ウシ心膜パッチ形成術,第20病日に対し創部治癒遅延にデブリードマン・再縫合閉鎖術を施行した.創部の熱感・疼痛・拍動性腫脹の拡大を主訴に同年11月に外来を受診した.CTで左CFAに径60 mm大の囊状動脈瘤を認め(多剤耐性表皮ブドウ球菌陽性),感染性仮性動脈瘤切迫破裂疑いの診断で緊急末梢血管用ステントグラフト内挿術を同日施行し,抗生剤投与を開始した.3日後に根治術として,閉鎖孔バイパス術,汚染ウシ心膜・ステントグラフト除去ならびに鼠径創内デブリードマンを施行した.鼠径創は閉鎖せずに終了した.術後は創処置を継続し,抗生剤投与を2週間行った.12月末に自宅退院,創部自己管理へ移行した.翌年4月に創は完治し,術後16カ月後の現在も感染兆候を認めない.

  • 萩原 裕大, 三森 義崇, 伊從 敬二, 有泉 憲史, 進藤 俊哉
    2025 年34 巻3 号 p. 75-79
    発行日: 2025/06/27
    公開日: 2025/06/27
    ジャーナル オープンアクセス

    両下肢多発性動脈瘤を合併した急性動脈閉塞症例を経験した.症例は64歳,男性.突然右下肢痛を自覚し当院に紹介された.右下腿以下にチアノーゼと冷感を認めた.造影CT検査で右総腸骨動脈瘤,両側総大腿動脈瘤,両側膝上膝窩動脈瘤を認めた.右外腸骨動脈(EIA)以下の広範な閉塞を認め,側副血行路で外側大腿回旋動脈(LCx)と膝下膝窩動脈以下が造影された.左EIAに50%の狭窄を認め,鼠径以下の動脈閉塞を認めた.左EIAより直接造影されたのはLCxのみで,側副血行路で膝上膝窩動脈以下が造影された.緊急で左EIA–左LCxバイパス,左グラフト–右LCxバイパス,右グラフト–膝下膝窩動脈バイパスを人工血管で施行した.左EIAの狭窄に対してbare metal stentを留置した.術後経過は良好で症状も改善した.対側のLCxを再建することでin-flowを確保してクロスオーバーで患側の血行再建を行った.

  • 本橋 宜和, 吉田 正隆, 土田 隆雄, 寺下 和範, 山中 祐輝, 嶋田 芳久
    2025 年34 巻3 号 p. 81-84
    発行日: 2025/06/29
    公開日: 2025/06/29
    ジャーナル オープンアクセス

    結腸動脈瘤は内臓動脈瘤でも比較的稀な疾患である.今回,慢性腹部大動脈完全閉塞に合併した巨大中結腸動脈瘤の手術例を経験したので報告する.症例は87歳,女性.腹部拍動性腫瘤を触知したため施行した造影CTで,腎動脈分岐部直下から下腸間膜動脈(IMA)分岐部直上にかけて腹部大動脈の閉塞と,上腸間膜動脈(SMA)からIMAに至る動脈の拡張,最大短軸径52 mmの巨大中結腸動脈瘤を認めた.このため,中結腸動脈瘤切除術を施行した.中結腸動脈瘤の成因として,腹部大動脈閉塞によるSMAからの代償性血流増加が関与したと考えられた.手術に際し,左腋窩動脈–左総大腿動脈バイパスを先行し,IMAからの腸管血流を確保することで中結腸動脈単純遮断による腸管虚血を防ぐとともに,側副血行路の過剰血流による遠隔期の動脈瘤再発を予防した.

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