抄録
犬糸状虫類似のシリコンチューブを右心房および三尖弁口部に挿入した犬糸状虫症caval syndromeの人工モデルについて, 右心系循環動態を計測した. 実験は, 数個の結び目をつくったチューブを15~25本挿入した結束群 (6例), 結び目をつくらずにそのまま7~11本を挿入した少数群 (3例), 29~37本を挿入した多数群 (3例) で実施した. チューブ挿入後, 全ての例において, 血管造影剤が右心室から右心房に逆流するのが認められ, その程度は多数群で最も重度であった. 心電図において, 心房性または心室性の期外収縮が認められた. 右心房圧のa波およびv波は全例で上昇したが, v波の上昇は多数群で特に著しかった. 肺動脈圧は低下もしくはわずかに上昇する傾向にあり, 総肺血管抵抗は増加した. 右心拍出量は全例で減少した. これらの右心系循環動態の変化は, 肺循環が比較的良好に保たれている自然発症例の循環動態と類似していた.