わが国のR研究所で飼育・繁殖されている主としてニホンザル296頭およびフィリピンより輪入されS研究所で検疫中のカニクイザル147頭, 計443頭のサルの血清について, 5種類のズーノーシスの病原体に対する抗体調査を行った. SV40に対して, R研究所のサルは陽性率89.1%と極めて高率であったが, S研究所の輪入サルには陽性個体は全く検出されなかった. Chlamydia psittaciおよびYersinia pseudotu berculosisに対する陽性率はR研究所のサルではそれぞれ14.4%および11.6%で, これに対しS研究所のそれは9.0%および3.5%で, 両病原体に対し, R研究所のサルの陽性率が高率であった(P>0.05). Toxoplasma gondiiおよびLeptospira interrogansに対する陽性率は, 全体でそれぞれ3.6%および2.9%で, 両研究所のサルの間で差はなかった. 今回の調査で, SV40を除く4種類の病原体に対する抗体陽性率は概して低率で, また, 陽性個体でも抗体価が低く, 現時点では, これらがサルの間に蔓延してないことがわかった. しかし, SV40については, わが国のサルに広く浸淫していることが示唆された.