抄録
5-ブロモデオキシウリジンとアラビノシルチミン処理によりオーエスキー病ウイルス(ADV)強毒株から温度感受性チミジンキナーゼ欠損変異株を分離し, ZHtsTK-株とした. ZHtsTK-株はHmLu-1細胞と鶏胎児線維芽細胞におけるプラックサイズ, 並びにBamHI, Sal I及びKpnIを用いた制限酵素切断分析により強毒株と容易に識別することができた. ZHtsTK-株はマウス, モルモット及びウサギに対して病原性を示さなかった. しかし, これらの動物でADVに対する中和抗体の産生が認められた. この株を接種したウサギにデキサメサゾンを投与し三叉神経と鼻汁からウイルス分離を試みたが, 全て陰性であった. ZHtsTK-株は5日齢豚に対しても病原性を示さなかった. 筋肉内接種した子豚の鼻汁からウイルスは分離されなかった. また, 接種後9日目に各臓器からウイルス分離を実施したが全て陰性であった. 温度感受性とチミジンキナーゼ欠損の組み合わせはADVの病原性を著しく減弱させることが示唆された.