Journal of Veterinary Medical Science
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摘出ウマ冠状動脈のヒスタミンによる収縮・弛緩へのH1受容体の関与
小尾 岳士宮本 篤松元 光春石黒 茂西尾 晃
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1991 年 53 巻 5 号 p. 789-795

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抄録

ウマから摘出した冠状動脈の左下行枝中間部の内皮存在及び内皮除去血管標本を用いてヒスタミンによる収縮・弛緩機序を検討した. ウマ冠状動脈はヒスタミンの用量に応じて収縮を示すものと, 低濃度のヒスタミンで弛緩を示し, 高濃度では収縮を示すものがあった. 内皮を除去すると収縮が増強され, 低濃度のヒスタミンでみられた弛緩は消失した. pD2値は, 内皮存在標本では4.70±0.08であり, 除去標本では4.95±0.08であった. ヒスタミンによる収縮は, 内皮存在および内皮除去標本ともに, H2-アンタゴニストであるシメチジンにより影響を受けなかったが, H1-アンタゴニストであるジフェンヒドラミンにより内皮存在標本は非競合的に, 内皮除去標本では競合的に抑制された. プロスタグランジンFまたはノルエピネフリンで収縮させた状態では, 内皮存在標本はヒスタミンにより弛緩した(pD2値は7.80±0.11)が, 内皮除去標本では弛緩はみられなかった. 内皮存在標本でみられたヒスタミンによる弛緩は, ジフェンヒドラミンにより競合的に抑制された. さらに, この弛緩はメチレンブルー, キナクリン, L-ニトロアルギニン, ゴシポールおよびAA861により有意な抑制を受けた. しかし, インドメサチンは無効であった. これらの成績は, ウマ冠状動脈のヒスタミンによる収縮・弛緩は, それぞれ平滑筋細胞および内皮細胞のH1受容体により調節されており, 内皮細胞のH1受容体刑激は内皮細胞から平滑筋弛緩物質を放出させる可能性のあることを示唆している.

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