老人斑と脳血管アミロイド症の分布を明らかにするため, 10歳以上の老犬の脳の連続切片を作製し, それらの切片を, チオフラビンS染色や改良ビルショウスキー染色などの特殊染色法および抗ベータ蛋白抗体を用いた免疫組織化学的手法により病理学的に検索した. 密なアミロイド沈着を認める老人斑, すなわち成熟斑(mature plaque)と血管周囲斑(perivascular plaque)は, アミロイド沈着を伴う血管(脳血管アミロイド症)と常に密接な位置的関係を示した. 一方, ほとんどの瀰漫型斑(diffuse plaque)は脳血管アミロイド症の分布とは無関係に存在していた. 瀰漫型斑は, 多くの場合神経細胞とダリア細胞の両者あるいはいずれか一方を含んでいた. また, 免疫染色により神経細胞の辺縁に時折アミロイド沈着が認められた. 以上の所見より, 老犬の脳における老人斑諸型の形成過程にそれぞれ異なるメカニズムが関与することが示唆された.