Journal of Veterinary Medical Science
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ボツリヌスD型神経毒素遺伝子の塩基配列とアミノ酸配列の決定
砂川 紘之大山 徹渡部 俊弘井上 勝弘
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1992 年 54 巻 5 号 p. 905-913

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抄録
ボツリヌスD型神経毒素は抗原的に多様性であり, その原因を明らかにする目的でCB16株の産生する神経毒素遺伝子のクローニングと全塩基配列の決定を試みた. ボツリヌスD型菌CB-16株の毒素変換ファージd-16φのDNAからλgt11-Y1090系を用いてD型神経毒素遺伝子のクローニングを行い, 軽鎖のN末端を含むフラグメントとその隣接フラグメントの塩基配列を決定した. その配列には1,275個のアミノ残基に対応する一個のオープンリーディングフレームが含まれていた. この塩基配列から推測されたアミノ酸配列は分子量50,410の軽鎖と96,394の重鎖によって構成されており, この配列は精製毒素の軽鎖と重鎖ならびにそれらを蛋白分解酵素で部分分解して得られた5個のポリペプチドのN末端アミノ酸配列と一致した. 軽鎖と重鎖は軽鎖C末端近傍のCys437と重鎖N末端近傍のCys450の間のジスルフィド結合によって連結された2本鎖構造をとっているものと推測された. D型CB-16株毒素の塩基配列はこれまでに報告されたD型毒素の塩基配列と3個の塩基が異なり, それに対応してアミノ酸配列に3個のアミノ酸残基の置換が認められた. D型神経毒素のアミノ酸配列はボツリヌスC1とA型毒素そして破傷風毒素のアミノ酸配列と比較するとそれぞれ53.1%, 35.9%, 34.9%の同一性を示した. さらにD型毒素の重鎖にはC1毒素と非常に高い同一性を示す疎水性領域の存在が認められた.
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