抄録
室内繁殖用に飼育されていた野生由来カニクイザルの雌の解剖例94例中27例(28.7%)に子宮内膜症(endometriosis)が観察された. 症例は, 11歳から23歳までのサルに観察され, 平均年齢は, 15.3歳であった. 帝王切開歴のある群とない群との間に発生率の有意な差はなかったが, 最終妊娠からの期間は症例群において有意に長かった. 病理組織学的に分類した4タイプのそれぞれの発生率は, 1)骨盤腔内に限局した外子宮内膜症のみが見られた症例(51.8%), 2)外子宮内膜症のうち, endometrial cystの形成がなく子宮内膜組織の他臓器への浸潤の見られた症例(3.7%), 3)内子宮内膜症(腺筋症)のみが見られた症例(22.2%), 4)外および内子宮内膜症がともに見られた症例(22.2%)であった.