抄録
ドパミンおよびドブタミンの肝酸素需給動態に及ほす影響を12頭の雑種成犬を用いて検討した. 肝臓への酸素供給量はドパミン3および7μg/kg/minならびにドブタミン5μg/kg/minの投与による変化は認められなかった. 一方, ドパミン15μg/kg/minならびにドブタミン10および15μg/kg/minの投与時に肝酸素供給量は著明に増加した. 全身酸素供給量中の肝酸素供給量の分布率はドパミン15μg/kg/min投与時にのみ有意に増加した. 肝臓の酸素利用率はドパミン, ドブタミンそれぞれ15μg/kg/min投与時に有意な低下が認められた. この現象は肝酸素消費量に変化が認められなかったことから肝酸素供給量の増加に起因したものであった. 以上の結果からドパミン15μg/kg/min, ドブタミン10および15μg/kg/minの投与量は肝臓への酸素供給量を増加させる目的での使用に適していることが判明した. しかしながら肝臓の代識能はドパミンおよびドブタミンの投与時に亢進しないことが, 肝酸素消費量に変化がなかった事から判明した.