抄録
細胞外に分泌する比較的安定で堅いタンパク質と,動物細胞内に存在するフレキシブルなタンパク質の精製・保存方法は大きく異なる.タンパク質変性の最大の問題点は不溶化とも言えるが,Cys残基に対して化学修飾法で正電荷を付与するカチオン化技術は,変性状態のタンパク質に高い水溶性を付与して特に細胞内タンパク質の活用方法を拡張する.さらに動物細胞の総タンパク質の混合物は,核酸を除去することで変性状態でありながら純水中にて高い水溶性を示すこともわかってきた.これらの変性タンパク質の可溶化技術を活用することで,医用工学的なタンパク質の高度な利用方法が見えてくる.