化学と生物
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53 巻 , 4 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 岡山 吉道, 布村 聡, 羅 智靖
    2015 年 53 巻 4 号 p. 222-227
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
    ヒトとマウスFcεRI β鎖遺伝子は7つのexonからなる.ヒトFcεRI β鎖には2つのsplicing variant(βTとMS4A2trucと呼ばれる)があり,タンパク質に翻訳される.Full lengthのFcεRI β鎖は,4カ所の疎水性の強い膜通過部分を有し,N端,C端ともに細胞内にある.C端には,Immunoreceptor tyrosine-based activation motif(ITAM)と呼ばれるシグナル伝達モチーフがある.チロシンリン酸化したFcεRI β鎖ITAMには,Lynなどのシグナル分子が会合する.FcεRI β鎖ITAMは定型的なチロシン残基(YXXLX7-11YXXL)および3つ目の非定型的なチロシン残基(YEELNVYSPIYSEL)をもつ.マウスFcεRI β鎖ITAMの定型的なYを介したシグナルが,FcεRIの架橋刺激による脱顆粒および脂質メディエーターの産生に対してamplifierとして働いている.一方,FcεRI β鎖ITAMの非定型的なYは,サイトカン産生に対して抑制的な制御を行っている.すなわちFcεRI β鎖がそのITAMの定型的および非定型的Yを介してIgE依存性のマスト細胞活性化における正負両方向性の調節によるファインチューニングを行っている.ヒトFcεRI β鎖の発現が抑制されたヒトマスト細胞ではFcεRIの架橋による脱顆粒,PGD2産生,サイトカイン産生は統計学的有意に抑制される.これは,単にFcεRIの細胞表面の発現が減少したためのみならず,Lynの細胞膜への移行が阻止されていたため下流のシグナル伝達が抑制されたことによる.細胞膜に発現しているβ鎖を標的とした薬剤が,アレルギー疾患の新規治療薬となる可能性がある.
  • 松井 利郎
    2015 年 53 巻 4 号 p. 228-235
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
    高血圧治療薬として初めて登場したのがACE阻害薬である.ACEとはAngiotensin I-converting enzymeの略称であり,レニン分泌を諸端とする一連の代謝系における昇圧物質の産生にかかわる酵素とされる.この代謝系はレニン–アンジオテンシン系と呼ばれ,これまで昇圧系として認識されてきた.しかしながら,近年の報告では本系の代謝物に降圧作用を示す物質が存在することが判明している.ACE阻害を基本とする機能性食品成分(主としてペプチド)は特定保健用食品の関与成分として取り扱われているが,本系の複雑な代謝が明らかになりつつある現在,抗高血圧食品とのかかわりについて再考する段階にあると考える.本稿では,これらを踏まえてレニン–アンジオテンシン系について概説する.
  • 千葉 靖典
    2015 年 53 巻 4 号 p. 236-244
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
    抗体医薬品を中心としたバイオ医薬品の開発は年々加速しており,それに伴いタンパク質の翻訳後修飾をどのように制御していくかが一つの課題となっている.特に糖鎖修飾はその薬効や安全性に影響するため,医薬品として適した糖鎖構造の解明が急がれている.そのためには均一な糖鎖構造を有するタンパク質の生産技術と評価技術が必要となる.しかし細胞を用いて均一な糖タンパク質評品を生産することは現段階では困難であるため,糖鎖加水分解酵素の糖転移反応を用いて生産することが検討されている.われわれが単離した酵母由来の糖鎖加水分解酵素は,二分岐複合型糖鎖を切断する活性を有しており,糖鎖の改変(リモデリング)に有効であると考えられた.
  • 二見 淳一郎
    2015 年 53 巻 4 号 p. 245-251
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
    細胞外に分泌する比較的安定で堅いタンパク質と,動物細胞内に存在するフレキシブルなタンパク質の精製・保存方法は大きく異なる.タンパク質変性の最大の問題点は不溶化とも言えるが,Cys残基に対して化学修飾法で正電荷を付与するカチオン化技術は,変性状態のタンパク質に高い水溶性を付与して特に細胞内タンパク質の活用方法を拡張する.さらに動物細胞の総タンパク質の混合物は,核酸を除去することで変性状態でありながら純水中にて高い水溶性を示すこともわかってきた.これらの変性タンパク質の可溶化技術を活用することで,医用工学的なタンパク質の高度な利用方法が見えてくる.
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バイオサイエンススコープ
農芸化学@High School
  • 村田 篤志
    2015 年 53 巻 4 号 p. 265-267
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本農芸化学会2014年度大会(開催地:明治大学)での「ジュニア農芸化学会」において発表された.日本を含め東アジア一帯に生息する捕食性テントウムシの一種であるナミテントウ(Harmonia axyridis)は,農作物に被害を与えるアブラムシの駆除を目的に日本から欧米に移入された.しかしナミテントウは,欧米在来の捕食性テントウムシ類を激減させるなど自然環境に大きな影響を与えたことから,生物多様性を脅かすおそれがあるとされ,侵略的外来種に指定されている.一方,日本ではほかの捕食性テントウムシと共存しており,生態系に悪影響を与えているという報告はない.発表者は,ナミテントウを含む日本在来の捕食性テントウムシ3種の捕食行動や餌となるアブラムシの種類を詳細に比較・解析することで,日本でナミテントウとほかの在来の捕食性テントウムシが共生できる原因を考察するなど,得られた結果は非常に興味深いものとなっている.
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