2022 年 72 巻 2 号 p. 217-222
症例は,63歳男性.1ヶ月間持続する右下腹部痛を主訴に受診した.来院時,発熱と右下腹部に局所炎症を伴う15 cmの腫瘤を触知し,腹膜刺激症状は認めなかった.腹部CTで,同部位に腹壁膿瘍を認め,腹壁膿瘍と虫垂体部が密に接しており,虫垂炎に伴う腹壁膿瘍と考え,まずは経皮ドレナージを施行した.ドレナージ後も右下腹部痛が遷延したため,持続する虫垂炎が原因と考え,虫垂切除術を施行した.手術所見は,右下腹部で大網と回腸末端が一塊となって腹壁に癒着しており,剥離を進めると,虫垂体部が腹壁と強固に癒着しており,同部位で膿瘍と虫垂の交通が示唆された.病理検査で仮性憩室とその周囲に限局する虫垂神経内分泌腫瘍を認めた.膿瘍の成因は虫垂憩室の腹壁穿通と考えた.腹壁膿瘍は非常にまれである.また,虫垂憩室と虫垂腫瘍の関連についても文献的考察を加え,報告する.