日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K1-08
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放射光X線その場観察による40GPaまでの地殻関連鉱物の相変化と非圧縮率
*入舩 徹男末田 有一郎西山 宣正実平 武山崎 大輔井上 徹舟越 賢一
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抄録
我々のグループはWCアンビルおよび大型焼結ダイヤモンドアンビル(一辺14mm)を用いたマントルおよび沈み込んだ海洋/大陸地殻物質の相転移および密度変化を、SPring-8の大型マルチアンビル装置(SPEED-1500, SPEED-MkII)を用いたX線その場観察により実験的に決定している。現在までのところ焼結ダイヤモンドアンビルを用いて常温下では50GPaを越える圧力の発生に成功するとともに、40GPa余り・1500C程度の温度圧力の安定的な発生が可能になっている。現在地殻関連鉱物のいくつかについて高温高圧下での相変化やP-V-T関係を決定し、高圧相の等温非圧縮率やその圧力微分、また熱膨張率など、状態方程式を制約するパラメーターを得ている。
(MgAl2O4
 MgAl2O4スピネルはマントル最上部で重要な鉱物であるが、沈み込んだ海洋地殻物質中においても下部マントル領域においてcalcium ferrite構造関連相として出現する。MgAl2O4の下部マントル領域の相変化をX線回折その場観察実験により観察するとともに、その非圧縮率の決定を試みた。この結果calcium ferrite構造は40GPa、1500C程度まで安定であることを見いだすとともに、K0=213GPaという値を得た。
(CaSiO3
 立方晶ペロフスカイト構造のCaSiO3はマントルおよび海洋地殻物質中において、マントル遷移層以深で重要な高圧相である。このペロフスカイト構造への相転移圧力とともに、立方晶ペロフスカイトの安定性、また熱弾性パラメーターの決定をめざし、40GPa、1200C程度までの条件下で実験をおこなった。この結果立方晶ペロフスカイトへの相転移は12GPa程度の圧力で起こるが、その正方晶への変化は上記の条件下までは明確には認められなかった。立方晶ペロフスカイト構造CaSiO3の非圧縮率としてK0=228GPaという値を得ている。
(KAlSi3O8
 KAlSi3O8は9GPa程度の圧力下でホランダイト構造に相転移することが知られている。この相は特に大陸地殻物質中において、マントル深部条件下で重要であることが指摘されたが、その熱弾性についてはほとんど研究されていない。最近我々のグループでは26GPa, 1800K程度までの条件下でP-V-Tデータを収集し、現在その解析をすすめているが、予察的な解析によるとK0=183GPa程度の比較的小さい非圧縮率が得られている。
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© 2003 日本鉱物科学会
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