抄録
はじめに Fe-FexO系物質の高圧下での融解は、地球深部の核_--_マントル境界における物質の振る舞いを考えるうえで、非常に重要である。特に、最近報告されたMgSiO3組成のポストペロブスカイト相の結晶化学的性質から、Feに比べイオン半径の小さなMgがその構造を安定化する可能性が指摘されており(Iitaka et al. 2004)、FeO成分に富む酸化物相の高温高圧下での挙動が注目される。本研究では、表面酸化層を有する鉄箔を高温高圧下で融解させ、その回収試料を分析透過電顕(ATEM)で観察し、融解現象の解析を試みた。実験方法 厚さ約0.03 mmの鉄箔(純度99.9_%_)を、CO2とH2の混合ガスを流した雰囲気制御炉を用い、1070 Kで酸素分圧を制御しながら10 分間保持し、急冷回収し、高温高圧実験の出発物質とした。回収試料表面の酸化層は、反射光学系の微小部X線回折装置を用いたX線回折により、Fe0.94O相であることを確認した。高温高圧実験にはレーザー加熱ダイアモンドアンビルセル(LHDAC)を用い、NaCl圧力媒体中で16 GPa、2200 Kで融解させた。TEM薄膜試料は、Arイオンミリング法で作成した。ATEM解析は、エネルギー分散型X線分光器(EDXS)を付属した加速電圧200 kVの透過型電子顕微鏡(JEOL-2010F)を用い、明視野像、暗視野像、電子線回折像や高分解能像により行った。EDXSを用いた化学組成分析では、合成Fe0.94O粉末を用いて実験的にk-factorを求め、FeのK線 / L線比を用いて間接的に質量吸収厚みを推定し吸収補正を行った。結果と考察 Fe-FexO異相界面付近を中心に観察したところ、FeO側の融解領域は、ナノメートルオーダー(10 nm程度)の微細な結晶の集合体から構成されていた。制限視野回折法では、デバイリング的な回折像しか得られず、高分解能像による格子縞の方向からドメインサイズを推定した。おそらく、レーザー加熱終了時にメルト状態からの急冷過程で生成したFeO微細結晶であると考えられる。ただ、得られた回折像(デバイリング)には、岩塩構造(B1)のFeOでは説明できない面間隔を示す回折線もあり、現在その詳細を解析中である。また当日の発表では、EDXS法を用いた化学組成分析からFe/O比の推定を試みた結果を報告し、Fe-FexO異相界面における融解領域と固領域相の化学組成の違いを考察する。